日本アルプス全山縦走 
中岳 2925m
宝剣岳 2931m
檜尾岳 2727m
熊沢岳 2778m
駒ケ岳頂上小屋→宝剣岳→極楽平→島田娘→濁沢大峰→檜尾岳→熊沢岳→東川岳→木曽殿越→木曽義仲の力水(往復)→空木岳第1ピーク→稜線(野営)

宝剣岳から木曽殿越までの縦走路はすばらしく変化に富んだ道だった。中央アルプスの主要な山頂はすべて登ったつもりでいたのだが、縦走してみて初めて中央アルプスの本当のすばらしさがわかったような気がする。
宝剣岳と天狗岩


1990年冬山登山の記録
BACK 桂小場から木曽駒へ

2007年826日(日)

ウィスキーを飲んで、ほどよく酔ってしまって眠り込んだのだが、1時頃に目が覚めてしまって、それから眠れなくて困った。テントの外に出てみたら満天の星空で、頭上には煙るような銀河が広がっている。テント場はしんと静まりかえっていた。
目が覚めたら340分になっていた。今日は8時間半の歩行時間なので、早立ちをするつもりだったのに寝坊してしまった。朝食にはカロリーメイトをかじっただけで、テント撤収。東の空が赤く染まって、御来光を見ることができた。木曽駒山頂にはたくさんの登山者がいて、御来光を見ていた。
テント場を出発したのは5時半であった。
縦走路の分岐に戻って、そこから中岳に向かって登って行く。岩礫の急な登りである。意外と登山者とすれ違うことなく中岳の頂稜に着く。中岳山頂は巨岩におおわれていて細長い。左右どちらにも、巨岩が重なるピークがある。まず、右に登ってみた。巨岩の上に立つと朝日を浴びた御嶽山の眺めがすばらしい。でも、山頂の標識はなかった。引き返して左のピークに向かうと、そこに祠があって、前には錆びた宝剣が置かれていた。祠があるこちらが山頂なのだろう。祠の横にある石碑には「駒ヶ嶽神」と刻まれていた。
中岳から下る。行く手には巨岩の重なる宝剣岳が聳えている。その手前に小屋が二棟あって、手前が天狗荘で後が宝剣山荘なのだ。小屋に向かってザクザクの道を急下降する。小屋の前から右側に回りこんで行くと、宝剣岳の絶壁に巨岩がそそり立っている。よくみると天狗の横顔のようで、これが天狗岩なのだ。予想以上に大きなものである。
天狗岩を眺めてから、いよいよ宝剣岳の登りになる。この山では、冬に度々滑落事故が起きている。岩場の急峻な登りなのだが、困ったことに私の前には30人以上の団体が列をなして登っていた。穂高岳でのことを思い出してしまう。素人の団体のためにすさまじい渋滞になったのだ。
予想通り、渋滞になってしまった。急峻な岩場なので追い越すこともできない。待つしかないのだ。宝剣岳への登りは20分なのだが、この調子なら1時間もかかってしまうのではないかと、あきらめの気分。山頂直下でかなり待たされた。でも、これは山頂で記念写真をとるために時間がかかっていたのだ。山頂は本当に狭くて、2〜3人立つのがやっとである。でも、この団体の世話人が、シャッターを押す役を引き受けていて、次々とカメラを預かって撮ってくれる。団体のメンバーではない私の分も撮ってくれた。
この団体は毎日新聞社が主催したもので、木曽駒から空木岳を縦走するツアーなのだ。そして意外にこのメンバーは健脚であった。私が宝剣山頂まで1時間かかるのではないかと思ったのだが、実際は25分で山頂に着いていた。かなり途中待たされることがあったにもかかわらずだ。
宝剣岳はこれからが本当に大変なコースで、岩場の急下降の連続なのだ。鎖場もあって、下を見ると目が回るような絶壁である。この急峻な岩場を下ってほっとすると、目の前にはまた岩峰が立ちふさがる。これを登って、ピークでは巨岩のトンネルをくぐり、再び険しい岩場を下る。足をどこに置いたらいいのかと悩んでしまうような岩場で、かなりきつい。団体の中でも経験の浅い人は立ち往生したりする。でも、この団体のサポーターはしっかりしていて、足がかり、手がかりを親切に指導していた。(穂高で会ったリーダーとは大違いだ。)
岩峰を越えると、ようやく行く手に平坦なピークが見える。ほっとしたが、そこまではもう一度急な岩場を下らなければいけなかった。
指導標の立つピークに着いたのは645分である。
このピークでは団体が全員休憩していて、大混雑であった。ここが極楽平と思っていたのだがそれは間違いで、三ノ沢岳の分岐なのだ。極楽平はもう少し先の、ロープウェイ千畳敷駅への分岐がそうなのだ。少しだけ休憩してすぐに出発した。この団体を追い越してしまいたかったのだ。
ここからは今までとうって変わって、緩やかな稜線歩きである。振り返ると巨岩の重なる宝剣岳が聳え、稜線の右には朝日を浴びた三ノ沢岳が堂々と聳えている。左下にはロープウェイ駅、千畳敷カールが意外と狭く見えた。
行く手には長く稜線が続き、その先にはアルペン的な急峻な山が聳えている。空木岳である。すばらしい眺めで、歩いていて楽しくなってしまう。

ほとんど平坦な稜線をのんびり歩いて行く。登山道の両脇にはロープが張られていて、お花畑を保護している。よく見るとウスユキソウがあった。中央アルプス駒ケ岳特有の花で、正確には「コマウスユキソウ」という高さ10cmほどの小さな花なのだ。ウスユキソウは日本のエーデルワイスとも呼ばれる。
極楽平に着く。左下には千畳敷カールとロープウェイ駅が見えた。
ここからは緩やかな登りになって、ピークを越すと急な下りが待っていた。このピークにはなんの標識もたっていなかったが、島田娘のようである。
砂礫の白い道をジグザグに急下降する。滑りやすくて緊張する下りだ。平坦な稜線に着いて、ほっと一息。振り返ると想像以上にすごい急な道を下ってきたことがわかった。
ハイマツの中に続く登山道をたどる。ほとんど平坦な稜線を行くのだが、所々巨岩のピークがあって、それは険しい岩場になっていた。

行く手に大きなピークが迫ってくる。ハイマツに覆われた緑の山なのだが、山頂には巨岩が突きたっているのが見える。鞍部から急登が始まる。ハイマツの中をジグザグに登って、尾根から一旦右に回りこんでから山頂目指して急登する。ようやく巨岩が重なる山頂に着くとそこには木柱がたっていたが、山名は書かれていなかった。でも、ここが濁沢大峰であることは間違いがない。
この木柱の立つピークから巨岩が重なる頂稜を行く。痩せて険しい岩稜を歩いて岩稜の南端に着くと、そこからはすさまじい急下降になる。振り返ると、あの
30人の団体の先頭が濁沢大峰山頂に着いたところであった。この団体は速い。
ここから行く手の稜線を眺める。目の前には大きなガレ場を持った山が聳えていて、その山頂から左に伸びる尾根に小屋が見える。檜尾岳と檜尾避難小屋なのだ。さらにその右奥には山頂に巨岩が突き立つ熊沢岳が見える。熊沢岳から稜線は左に折れて、ゴジラの背のようなギザギザになって続き、一旦大きく落ち込んでからいかにも険しい大きな山に連なる。これが空木岳なのだ。そしてこの空木岳の奥にもすごい山が見えるのだが、これが南駒ケ岳である。中央アルプスというのは北アルプスに劣らないアルペン的な山なのだ。この眺めにはひたすら感激してしまう。
…でも、問題は今いる岩稜からの下りであった。すさまじい岩場の急下降である。檜尾岳との鞍部はほとんど真下に見え、そこに至る尾根は巨岩の絶壁である。こんなところどうして下るんだと思ってしまう。岩場の尾根を下って行くが、途中、一旦尾根から外れて伊那側に下る。岩場の急な下りで鎖が下がっている。その先もザラザラの砂礫の急下降で、これはロープにすがって下った。
鞍部に着いてほっと一息。でも目の前には檜尾岳への急峻な登りが待っていた。
ハイマツのトンネルをくぐって、それからジグザグの急登が始まる。振り返ると濁沢大峰の下降路が見え、あんな道を下ったのかと感心してしまう。
ハイマツの間をジグザグに登って傾斜が緩やかになると、尾根の右側を斜めに登って行くことになる。
登山者が
3人ほど休憩する山頂に着いたのは9時半である。檜尾岳と書かれた山頂標識があって、三角点もおかれていた。
ここで長めの休憩をとった。稜線の東にはカマボコ型をした避難小屋が見える。地図には10分行けると書いてあるのだが、ずいぶん遠く感じる。
来た道を振り返ると稜線の奥に小さな三角峰が突き出ている。これが宝剣岳なのだが意外と小さい山なんだと思ってしまった。行く手南方には岩峰のピークが連なる尾根で、その先には岩塔がたつ険しい山が見える。これが熊沢岳らしい。檜尾岳山頂からの展望は見飽きることがない。
山頂からは稜線の少し右下を緩やかに下って行く。やがて下りの傾斜がきつくなって砂礫の道をジグザグに下る。行く手には巨岩が連なる険しい尾根道が迫る。この岩稜を急登して道が緩やかになると、二重山稜の中のお花畑に着いた。緑の草原が広がっているのだが、花はあまり咲いていなかった。残念。
この草原の斜面を登って稜線を越える。このピークが大滝山だと思うのだが、山頂標識はなかった。
そこからはすさまじく険しい急下降になる。岩稜の左側を捲いて行く。この斜面には花がたくさん咲いて素晴らしくきてきれいなのだが、道はすごく険しい。鞍部からハイマツを掻き分けて登って稜線に出る。あとは稜線のほとんど平坦な道を行くのだが、途中には岩峰のピークがいくつもあって、その岩場の上り下りがきつかった。

岩塔が立つ山が近づき、その尾根にはいくつも巨岩が見える。この間を通って山頂を目指すのだ。岩場を急登してようやく山頂に着くと、そこには巨岩が聳え立ち、巨岩の後に木柱がたっていた。山頂だと思ったのだが山名は書かれていない。あたりを見回すと、この巨岩のピークの先に平坦地があって、登山者が休憩しているのが見えた。そこにも指導標がたっている。行ってみると、これが熊沢岳の山頂であった。1117分であった。
熊沢岳山頂で休憩していると伊那側から雲が湧き上ってきた。伊那側は雲、木曽側は晴れという雲の境目の尾根を行く。行く手の稜線には3つほどのピークが聳え、このアップダウンを繰り返すのだ。これはきつかった。
東川岳山頂に着いたのは1318分である。バテバテであった。でも、ここまで来たら、あとは木曽殿越に下って、空木岳に登り返すだけである。もう少しだと自分に言い聞かせた。(でも、それは甘かった。)
乗越の向こうに聳えるのが空木岳である。山頂部は雲に隠れて見えなのだが、その登山路がよく見えて、それがいかにも険しい急な登りである。これは大変だという気がしてくる。長めの休憩をとって、気持ちを引き締めて木曽殿越に下る。すさまじい急降下が続く。ザクザクのいかにも滑りやすい砂地の下りが続く。ジグザグに下って行くのだが、裸地でつかまるものもない。ステッキで体を支えながら、前傾姿勢で慎重に下って行く。ようやく下に山小屋が見えてくると、登山道は木組みの階段になた。木曽殿山荘に着いたのは2時少し前であった。山荘前の広場のベンチでザックを下ろして、ほっとした

さて、今夜は空木平避難小屋に泊まるつもりだが水場はない。この木曽殿越から10分ほど下ったところにある「木曽義仲の力水」という水場があるので、ここで汲んで行くしかない。ザックをベンチにおいて、容器だけ持って水場に向かった。
小屋からどんどん下って行く。指導標に書かれていた通り、本当に10分ほど下ってようやく水場に着いた。3人の先客がいた。ところが困ったことに、最近は雨がほとんど降っていなかったため、水の流れがすごく少ない。樋から流れ出る水は細い髪の毛のようで、1リットルを汲むのに5分以上かかってしまうのだ。先客の3人はそれぞれ2リットルほど汲んだため30分ほど待たされてしまった。私は今夜の野営に使う分と明日の行動中の分として4.5リッターを汲むのだ。私が汲み始めたら、あの30人のパーティの一部が水汲みにやってきて、長い行列になってしまった。よっぽど2リッターほどで切り上げてしまおうかと思ったが、しっかり汲んでおかないと明日は大変なことになる。明日の宿泊予定の安平路避難小屋まで水場はないのだ。ようやく水汲みが終わったのは3時少し前であった。
小屋に戻って、ザックを背負うとめちゃくちゃに重くなった。これで空木岳への急登をしなければいけないのだ。木曽殿越から山頂までは標高差は360mだ。そんなに大変ということはないと思うのだが…。でも、すごい登りだった。
雲が湧き上る中、すさまじく急な道を登って行く。緑のハイマツの急斜面に続く道を登って行く。行く手には巨岩が聳え立つ頂稜が見える。巨岩の重なる頂稜に着いたが、ここは山頂ではなくて、巨岩を右から捲いて登ってようやく山頂に立つのだ。1時間の急登だった…でも、そこは山頂ではなかった。
巨岩には赤いペンキで第1ピークと書かれている。雲の中で視界はきかない。休んでいると少しだけ雲が切れて、行く手には高く岩峰が聳えていた。まだ、あの岩山を越えなければいけないのだ。ガイドブックをよく読むと、空木岳山頂までは3つのだましピークがあるのだそうだ。まだ最初のピークに着いたばかりである。
岩が重なる尾根を行き、一旦下るとその先には巨大な一枚岩の絶壁が聳えている。この岩壁の右下をたどり、その奥でこの岩山を登る。梯子と鎖の急登である。岩の溝を鎖でにすがって乗り越えると、再び行く手には巨岩のピークが聳える。巨岩の絶壁を再び登る。これも最後は岩の溝を鎖で登って頂稜に着く。この先はほとんど平坦な稜線になるが大きな岩が累々と重なっている。雲の中でまったく視界がきかなくて、山頂はいったいどこなんだと思ってしまう。
岩稜を行くと、再び岩に覆われた鋭い峰が霧の中に浮かびあがる。でも、登山道には砂礫がまじるようになった。痩せた岩尾根が続き、行けど行けど山頂には着きそうもない。4時前に空木岳山頂に着く予定が5時近くになっても、まだ着けない。岩峰を越えて巨岩の間の稜線を行くと、右下のハイマツの中にテントが張れそうな空き地を見つけた。風が吹き始め、霧は深く、時間も5時。もう限界ということで、ここにテントを張ってしまうことにした。狭くて、テントがハイマツにひっかかるが仕方がない。なんとかテントを張り終えて、落ち着いたのは5時半を過ぎであった。


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駒ケ岳頂上山荘


中岳への登り


中岳山頂


宝剣岳への登り


山頂直下で大渋滞


宝剣岳山頂


三ノ沢岳との分岐


縦走路を行く


極楽平、ここからロープウェイ駅に下れる


濁沢大峰山頂から三ノ沢岳


濁沢大峰からは岩稜を下る


鎖で急降下する


行く手に大きく檜尾岳


檜尾岳山頂


熊沢岳への道


熊沢岳への登り


熊沢岳山頂


雲が湧き上がってきた


東川岳山頂


木曽殿山荘


空木岳への登り


すさまじい岩山になった


赤で第1ピークと書かれていた


疲れはててテントを張った






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