9月30日
シラビソ峠の展望台の前に車を停めていたのだが、雲で真っ白で何も見えない。本当は南アルプスのすばらしい展望が広がっているはずなのだ。
行動開始は7時40分、展望台の右に登山届けのポストがあるのでここから尾高山に登るのかと思ったが、踏み跡がいかにも心細い。少し行くと舗装道路に出たので振り返ったら、展望台の左にしっかりとした登山口があるのが見えた。もう少しでとんでもない道を登るところであった。
細かな霧雨が降っている。ズボンだけを雨具にして出発したのだが、これは正解であった。本格的な雨にはならなかったが、登山道には笹や草が覆い被さっていて、これが雨でびっしょりと濡れていたのだ。
登山口には新しいイラストマップがあって、それによると山頂までは2.9kmで1時間半の時間ですむらしい。そして、尾高山からさらに縦走すると奥尾高山があって、さらに奥茶臼山まで縦走できるのだ。ここからだと4時30分の登りで奥茶臼山の山頂に到達できるらしい。私が三百名山のこの山に登ったときは、長い長い青木林道を4時間も歩いて、それから登山道を登ったのだ。ここから登った方がはるかに楽しい登山ができたのではないかと思う。
登山口から木道を登る。細い尾根で、右には大沢岳に向かう林道が見えて、左は私が走ってきた林道である。尾根は一面、背の低い笹におおわれていて、そこにカラ松が林をつくっている。南アルプス側の谷が見えるのだが、白くけぶっていて雲が湧き上がってきていた。
細い尾根を15分ほど急登すると傾斜が緩やかになって、山頂まで2.5kmの指導標がたっていた。尾根が広くなって背の低い笹が絨毯のように広がっている。枯れた巨木には霧藻が下がっていて、なんともいえない風情である。
この尾高山は田中澄江の「新・花の百名山」に選ばれた山で、ヤブレガサという花が紹介されてている。その花を見ることはなかったが、この山は苔むした倒木や針葉樹が美しくて、すばらしい山だと思った。
道は石がゴロゴロするということもなくて、すごく歩きやすい。急な登りもほとんどなくて、指導標には「南信州ウォーキング」と書かれているのだが、家族でのウォーキングにはぴったりの山だと思うのだ。
登山道の所々には「ビューポイント」の案内がある。たぶんそこでは南アルプスの大展望が広がっているのだろうが、今日は霧雨で真っ白である。残念だ。
山頂まで2.0kmの標識をすぎるあたりからは、カラ松が姿を消して、コメツガやもみの木などの針葉樹林が広がる。
山頂まで1.7kmの地点にはビューポイントとの分岐があったが、ここから急な登りになった。背の低い笹原が広がっていて、その中には緑の苔に覆われた倒木がいくつも見える。私はこんな森の風景も大好きなのだ。つい、何枚も写真を撮ってしまった。
傾斜が緩やかになって、ほとんど平坦な道を行くと、前尾高山の標識がたっていた。その標識には赤い矢印が書かれていたので、山頂はこの先なのかとも思ったが、ここが前尾高山の山頂で間違いがなかった。到着は8時26分で、登山口から30分のところを45分もかかってしまった。
平坦な道を少し行くと山頂まで1.5kmの標識があって、その先は急な下りであった。道には虎縞のロープが張られていた。登山道には木の根が網のように広がっていて、それが濡れて滑りやすいので緊張して下らなければいけなかった。
鞍部に着くと、左はなだらかな針葉樹の林なのだが、右は崖であった。
なだらかなピークを二つほど越すと山頂まで0.5kmの指導標があった。もうすぐだと思ったのだが、ここからはすさまじく急な登りになった。鬱蒼とした針葉樹林の中を急登すると、しだいに尾根が狭まってきて、岩がゴツゴツする痩せ尾根になった。こんなのがずうっと続くのかと思ったら、あっさり山頂に着いてしまった。
山頂は尾根の途中の岩が重なったところで、山頂といった感じではない。山名の標識がなかったらそのまま通過してしまうようなところである。ようやく登り着いた山頂だが、樹林に囲まれていて展望はまったくない。山頂の岩のすぐ下に三等三角点があった。
ビューポイントの標識があったので、これに従って少し行くと展望の開けたところがあった。でも、真っ白で何も見えない。
山頂に戻って、岩に腰掛けて休憩。今日はポッドにお湯を入れてきたので、暖かいコーヒーを飲むことができた。休んでいると、霧雨が小雨のようになって、シャツが濡れ始めた。展望もないので、コーヒーを飲み終えたところで、すぐに下山を始めた。
登山口に戻ったのは10時25分である。
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