BACK 三つ岳から鷲羽岳
9月3日
テントをたたんだら、今日も露でフライシートはビショ濡れであった。
出発は6時10分。まず三俣蓮華岳に登るのだ。
大きな石がゴロゴロする道を登ってゆくと双六岳の巻き道の分岐がある。
私は山頂をめざす。ここまでは比較的ゆるやかな登りであったが、一変して急登が始まった。まだ体が温まっていないためか疲れる。山頂に近づくにつれて雲の中に入っていって、山頂ではまったく展望はえられなかった。三俣蓮華岳の山頂は広くて、登りついたところには指導標がたっている、この標識から右に少し行ったところに三角点があった。
三俣蓮華から双六岳に向かう。行く手に大きな山が迫っているが、これは双六ではなくて丸山という双六の前衛峰なのだ。ただ、この縦走路から、丸山の右に鋭く尖った山が見える。このあたりにあんな山があったのかと不思議に思ってしまったのだが、地図で確認してみると「笠が岳」なのだ。見る方向によって、あんな鋭い山に見えるのかと楽しくなってしまう。丸山に上りつくが、広い台地に這い松が絨毯のように広がっている。少し探したが、山頂らしきところはなかった。この台地を行くと、行く手には双六が大きい。
丸山から下って鞍部に着くと、底からは這い松の間の道を行く。山腹をトラバースするように登って行くと、分岐があった。左は双六の山頂を巻く中間道である。私は山頂をめざす。ここからは双六に向かってのきつい登りである。
双六岳の山頂に着いたのは8時15双六岳の山頂に着いたのは8時15分でる。
山頂は広い台地の隅に盛り上がったところで、このコブから少し下ると、すごく広い平らな尾根を行くことになる。この台地のつき合ったところからは急降下する。岩がゴロゴロする道で、その岩を縫って下る。
降りついたところが中間道との合流点である。
ここからは三俣蓮華と鷲羽岳・野口五郎の展望がすばらしい。
少し行くと、下に小屋が見えて、その小屋に向かって急降下する。
登山道は双六小屋の前の広場に着く。小屋の前には蛇口が並んでいて、これが水場なのだ。水は自由に使っていいのだ。小屋の前のテーブルで少し休憩した。
ここからはいよいよ槍ヶ岳に向かって登って行くのだ。
小屋から急な斜面をジグザグに登って、まず樅沢岳の山頂を目指す。上りきったところに広場があって、鷲羽の展望がすばらしいのだが、ここは山頂ではない。ここから少しいったところに山頂の標識がたっていた。ここからは槍ヶ岳が間近に聳えているはずなのだが、槍の穂先は雲に隠れていた。行く手には細い尾根がアップダウンを繰りかえして槍に続いている。この尾根の左に岩の尾根が見える。
それが「北鎌尾根」である。
槍から派生する「鎌尾根」と呼ばれる尾根は三つあって、最も歩かれるのが「表銀座コース」と呼ばれる喜作新道を通って槍に至る道である。私が今歩こうとしているのは「西鎌尾根鎌尾根」で裏銀座コースといわれる。そして三つ目が「北鎌尾根」である。これは鋸歯のような岩稜の道で、一般道ではない。多くの山の先人がこの冬の北鎌尾根で散っているのだ。私の好きな加藤文太郎さんもその一人である。
その北鎌尾根を間近にみながら、西鎌尾根は続いているのだ。
アップダウンの尾根道を行くと左手には赤い色の岩山が見えてくる。異様な山である。これが「硫黄山」なのだ。この硫黄山の頭につくと、鎖場があった。これはたいしたことがない。
それから、急な道をジグザグに下る。コルで少し休憩した。実はこれからが西鎌尾根の核心部なのだ。
登るにつれて、道は岩稜になって、痩せた岩の尾根を渡っていったりするのだ。岩屑の急斜面を登ったり下ったりを繰り返すのだが、足場が極めて悪い。鎖場が続く道である。このあたりになったら、雲の中にはいって、薄暗い感じになってきた、風も強くなって、霧がすごい速さで流れて行く。
尾根を左から右に越えたら、向こうに登山者休憩しているのが見えた。これが千丈乗越であった。とうとうここまで来たぞ、という感じである。
ここで30分ほど休憩。行く手には槍ヶ岳が壁のように立ちふさがっている。雲が流れて、時々槍の穂先が顔を出す。あんなところまで登るのかと、その高度差に気持ちがくじけそう。
槍への道は息継ぐことなく、ひたすら急登が続く。急な尾根をジグザグに登って行くのだ。首が痛くなるような角度で上を見上げると、稜線に小さく小屋が見える。遠い。ため息が出てしまう。大きな岩の前を左に回りこんで、少し急登して尾根に出る。この石がゴロゴロする尾根を急登すると、槍の肩である。
千丈乗越から登り始めて1時間半、槍の肩に着いた。疲れた。
でも、そこは登山者で大賑わいであった。槍の穂先にはたくさんの登山者が取り付いているのが見える。
ザックを置いて、槍を往復する。何度も登っているので省略してしまおうかとも思ったが、せっかく目の前に日本アルプスの象徴、槍ヶ岳が聳えているのである。登らずにはいかないではないか。
登ってゆくと、下りで渋滞が起きていた。ため息が出てしまうのだが、最近はほとんど岩場の経験がない中高年が団体で日本アルプスにやってくる。そういうシロウトが岩場で渋滞を引き起こすのである。槍とか穂高には、もう少し修行してから来いよと叫びたいのだが、彼らは自分らによって引き起こす迷惑にはまったく無頓着なのだ。だれかなんとかしてほしい。
槍の山頂に着いたのは2時である。雲で穂高は見えなかった。山頂の祠のまえで記念写真を撮ってすぐに下った。下って行って驚いた。登りのときすれ違った団体が、まだグズグズとしていたのだ。すれ違ってから30分以上たっているのに、何をしてるんだと思ってしまう。結局、ほかの登山者と一緒に、このシロウトの団体の後に並ぶしかなかった。
でも、肩に降りて、少し休憩していたら、こんどは40人の大団体が登ってきた。彼らよりも先に登ってよかった…と思った。この団体が休憩しながら話してるのを聞くと、岩山を登ったことのないのが大部分みたいである。普通、槍の穂先の往復は1時間というのだが、これだけの団体で、しかもシロウトがいっぱいだったら、2時間かけても降りて来れないのではないかと思う。これから、彼らの後に登る登山者はひどいめに会うことになる。
予定ではここでテントを張るつもりだったが、まだ2時半である。行けるところまで下ってしまうことにした。どうせ明日は天気が崩れるのだ。今夜はババ平にテントを張るつもりだ。
下り始めたら、槍沢から濃い霧が登ってきて、あっという間に霧に閉ざされてしまった。急な岩礫の斜面をジグザグに下る。
3時過ぎになったのに、登ってくる登山者は多い。カレンダーを見たら、今日は土曜日なのだ。登山者が多いわけである。
途中から雨になった。私は傘をさして下っていった。氷河公園との分岐のあたりまで来たら雷が鳴り出した。3時半を過ぎた頃である。さっき、槍の肩であった40人の団体のことを思い出した。まだ槍の穂先にいるだろうから、この雷のなか、彼らはどうしてるんだろうと心配してしまった。
水俣乗越分岐のあたりで、雨は小雨になった。
ババ平に着いたのは5時少し前であった。
たくさんのテントが張られていて、私がテントを張り終えた後にも、けっこう登山者がやってきて、テントを張っていた。さすがに週末でえある。
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巻き道コースと三俣蓮華岳との分岐

三俣蓮華岳山頂

丸山への縦走路

双六岳山頂

水平道との合流点

双六小屋を振り返る

樅沢岳山頂

西鎌尾根の稜線

鎖場を登る

千丈沢乗越

槍ヶ岳への急登

槍の穂先への登り

槍ヶ岳山頂

ババ平キャンプ場
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