沢が白く濁った水になったので、これはもしかしたら温泉かと思って流れに手をつけてみたが冷たかった。
沢を左に渡り返して、あとは流れに沿って登って行く。樹林のなかに入ったりするがすぐに沢に戻って、ガレた岩場を越えて行くのだ。
沢の右側が岩壁になると、登山道は沢から離れて左の急斜面を登るようになった。でも、この先も岩だらけの涸れ沢である。すさまじく急な登りが続く。大きな岩には頻繁に赤い矢印が書かれている。息を切らせながら急登を続けると白い砂礫の平坦地があって、そこで道は左折する。ここまでも、きつい登りだったのだが、さらに急な登りになった。5分ほど急登したら「胸つき八丁」の標識があった。天狗堂まで200m、30分と書いてあった。たった200mに30分もかかるというのはどんな険しい道になるんだと驚いてしまうのだ。でも、すごく急な険しい登りであったが15分で平坦地に着いた。石の祠があって、ここが天狗堂であった。ここで休憩。登山者が一人休憩していて、後から二人登ってきた。ここはロープウェイ山頂駅からの道が合流するのだ。
天狗堂からな赤土のV字にえぐれた溝の中を登って行く。さらに岩がゴロゴロする中を登って、平坦地に着いたら木道が現われた。この左には池があった。水は少ししかないのだが、これが光善寺池であった。
急な登りが続くのだが、まっ青な空が広がっていて、樹木の緑がすごくきれいだ。山にかかっていた雲が薄れてきて、岩峰が姿を現す。妙高山は岩の山なのだ。
光善寺池から12分ほどで、風穴の前に着いた。小さな穴が二つあったが、手を当ててみても風は流れていなかった。
明るい林の中の急登が続く。視界が開けると長い稜線が見えた。これは妙高山の外輪山なのだ。その向うは一面の雲海で、空は雲一つなくまっ青に広がっている。
道が露岩になると、突然ロープが下がっていた。あまりたいした岩場ではないと簡単に越えたら、その先にはすさまじい絶壁があってロープと鎖が下がっていた。これを越えるのか…と、顔がひきつってしまうのだが、足場はちゃんと造られていて、なんとか登って行くことができる。でも、この上では岩壁をトラバースするのだった。これはけっこう怖かった。左にトラバースして、それから再び鎖にすがって真っ直ぐに登ると、ようやく鎖場が終わる。ほっとした。
この先は緑の潅木の急斜面を登るのだ。展望が広がって、すばらしい眺めだ。
でも登って行くにつれて岩場が多くなって、最後は岩だけになった。すさまじい岩場の登りが続く。岩壁に書かれた赤い矢印をたどる急登が続く。
ようやく傾斜がなくなったら、そこが南峰であった。岩の重なりの上に石仏が祀られている。馬にまたがって、両手のそれぞれに槍を持った仏像で「将軍地蔵」と書かれていた。
ここからの眺めはすばらしくて、遠くの山々が一望できる。目を凝らしたら、槍ヶ岳のような鋭い峰が見えた。まさしく北アルプスも展望が広がっているのだ。そして、行く手には登山者がたくさん休憩している北峰が見える。その奥には火打山と焼山が見えた。眺めていると飽きることがないのだが、ともかく妙高山山頂である北峰に向かうことにした。
|