水平道を行く。樹林に入ったり出たりするのだが、名前の通り、ほとんど水平な道が続く。でも、絶壁につけられ桟だったり、岩壁を削って造られた道だったりでかなり険しい道である。
左は黒部の深い渓谷で、200mほど下を渓流が流れているのだ。それを覗き見ると足が震えてしまう。渓谷の対岸は断崖絶壁が続いていて、これもまたすごい眺めである。
水平歩道は沢筋に沿ってつけられているので、沢が流れ込むところでは沢に沿って大きく入り組んでいかなければいけない。沢を遡るようにして行くと対岸に水平道が見える。沢の奥まで行って、それから回り込んであの道を歩くのかと思うとため息が出てしまう。
最初に大きく回りこんだのは蜆谷であった。岩にあけられたトンネルを潜って、谷の向こう側に出る。今度は歩いてきた水平道を左に見ながら歩いて行く。
峡谷の対岸には巨大なスラブの絶壁が聳えている。奥鐘山の岩壁なのだ。
水平道が続く。道は再び右の谷に向かって入って行く。この谷が志合谷で対岸の水平道の眺めがすごい。あんな絶壁につけられた道を歩くのかと思ってしまうのだ。
この谷への道はかなり長い。行く手に谷の奥が見えてくる頃に、水場があった。ここで少し休憩してこの水を飲んだ。冷たくてすごくおいしかった。
この先、谷は雪渓に埋まっていて、登山道はその雪渓の手前からトンネルの中に入るのだ。トンネルは中でカーブしているのでランプが必要である。中は本当に真っ暗で、LEDの明かりをつけて歩いて行くのだが、目が慣れないためにほとんど足下が見えなかった。トンネルの中は水が滴っていて、水たまりもできている。かなり長いトンネルで、心細くなってきてしまう。
ようやくトンネルから抜け出す。明るい日の下に出るとほっとした。行く手には奥鐘山の大絶壁が見え、これに向かって水平道を行く。
ようやく黒部本流に戻って、深い峡谷に沿って歩いて行くと、「太鼓岩展望台」という標識があった。欅平方向の谷を展望することができて、谷間にトロッコ電車の鉄橋が見えた。
水平道は数百メートルの絶壁につけられてて、その真下に黒部川が流れているので、見下ろしても渓流をみることはほとんどできない。
急峻な尾根を回り込んで、再び右の谷に向かって入って行く。これが折尾谷である。谷を遡る水平道を歩いて行くと、谷の上部は滝のようになっていて、その下に砂防ダムの堰堤が見える。登山道はこの堰堤に向かって緩やかに下って行く。近づいて見ると、堰堤がトンネルになっているのがわかった。このトンネルはそんなに長くないので灯りはいらなかったが、中は水浸しであった。トンネルをくぐって対岸にでて少し行くと、右の絶壁から滝が流れ落ちていて「折尾の大滝」という標識があった。断崖から流れ落ちる滝はすごい迫力である。
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