蔵王山という名の山頂はない。
蔵王山というよりはただ蔵王と言ったほうがふさわしいような気がする。
最高峰は熊野岳の1841mなのだが、ここに登るのは極めて簡単である。
蔵王エコーラインという観光道路があって、これを使うと車でほとんど山頂まで行けてしまう。刈田峠の駐車場に車を停めて、5分も歩くと有名な蔵王のお釜を見ることができる。そしてここから45分で熊野岳山頂に登ることができる。標高差はほとんどなくて、平らな道を散歩気分で歩いて行くと熊野岳に登れてしまうのだ。
実は私もこのようにして熊野岳に登った。
10月も末頃で、エコーラインが閉鎖される直前であった。(蔵王エコーラインは冬期間閉鎖されるのだ)
ともかくすさまじく風が強くて、寒かったのを覚えている。
この時期に山を登っているのは自分一人だけだった。
しかし、このようにほとんど車で登れてしまうと、どうも登山をしたような気がしない。
仙台に住んでいたときに南蔵王縦走をしようとしたことがある。
宮城県の白石から入って、硯石というところから登り始めた。不忘山まで行ったのだが、雨になってしまったので引き返した。
これがずうっと心残りだった。
そこでもう一度、このコースにチャレンジすることにした。
前回は硯石から登ったので、今回は白石スキー場から登る。
ガイドブックを読むとけっこう時間がかかりそうなので、出発は4時半。
2001年7月22日
スキー場のゲレンデが登山口のになっている山はけっこう多いのだが、困るのは道がはっきりしないことだ。ゲレンデのなかにはいろんな踏み跡がついていて、どれが登山道か迷うことが多いのだ。
スキー場の立派な建物の左に細い道があって、その突き当たりに案内板があった。左に行くと不忘山で右は水引入道に行く道とのこと。
まず不忘山に向かう。
登山道はゲレンデの下端に沿って続いていて、ほとんど水平の道だった。
20分ほど歩いて、着いたのが白石女子高校山小屋。
戸とか窓は全部閉まっていた。
ここからいよいよ登りになる。深い樹林の中の道を登って行く。
樹林帯を抜けると傾斜はきつくなる。はるか遠くに稜線が見えて、そこに大き岩が2つ見える。
この岩のある稜線に登りついて一休み。岩には石版がはめ込まれていて、これが不忘の碑であった。
不忘の碑というのは、太平洋戦争のときにB29がこの山に墜落して、それを弔ったものなのだそうだ。
ここから不忙山山頂は近い。
山頂には7時半到着。
不忘山山頂に着くと展望は一気に開ける。
行く手には屏風山が広がっている。本当に屏風のように切り立った山腹を見せている。
蔵王の山はまだ見えない。
ここで休憩しながらガイドブックを読んで、これからの時間を計算した。大変なことがわかった。
ガイドブックに書いてあったのは刈田峠から硯石に下るコースで、この標準タイムは5時間55分。登りだと7時間半かかる。これに刈田峠から熊野岳の往復が1時間半。登りだけで9時間かかる。これに下りの6時間を足すとなんと往復15時間もかかるではないか。
これでは途中で日が暮れてしまう。
悩んでしまったが、前回引返していることもあるので、今回は逃げるわけにはいかない。
登山を続行することにした。
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