登山道に戻って瑞牆山を目指す。指導標には山頂まで1時間40分と書かれていた。
シャクナゲの林の中を歩き、大きな岩の間を登って行くと、道は緩やかな下りになって、沢の岸に着いた。ここで沢を右に渡るのだが、橋はかかっていない。でも、水量がすごく少なくて簡単に渡ることができた。でも、考えてみたら、不動滝を過ぎたら、ずいぶん荒れた道になっている。どうやら整備されたのは不動滝までだけらしい。この先は荒れた道を行かなければいけないと覚悟した。
鬱蒼とした樹林のなかに苔むした巨岩が立ち並び、その間を縫うように登山道が続いている。原始のままの山を歩いているという感じだ。
徒渉して30分ほどはいかにも深山という雰囲気の中を歩いて行くのだ。沢からずいぶん離れて、急な登りが続くので、もう山頂への急登になったのかと思ったらそうではなかった。緩やかな下りになりと流れの岸に着いて、そこに王冠岩という標識があった。対岸を見上げたら大きな岩が聳え立っている。その岩の上が王冠にみえないことはない。王冠岩から沢に沿って5分ほど行くと、右・瑞牆山の標識があった。ここから沢を離れてすさまじい急登が始まるのだ。…と思ったら、最初は樺の木などの明るい雑木林の中を緩やかに登って行くのだ。でも10分ほどで針葉樹になって、この暗い林の中を急登するようになった。溝のような道には巨岩が重なていて、これを乗り越えて行くのだ。険しい登りが35分ほど続く。
ようやく傾斜が緩まって、行く手が明るくなったら、右黒森区という標識があった。昨日の金峰山登山の途中で祠があったのが黒森区だったが…。この標識の前を左折すると、すぐに新しい指導標がたっていた。ここが富士見平からの登山道との合流点で、山頂までは10分と書かれていた。
もう10分だけだと喜んだが、山頂まではそんなに甘くはなかった。すさまじい巨岩が重なっていて、これをロープにすがって越えたり、梯子を上ったりするのだった。きつかった。
林から抜出したら、そこが山頂であった。大きな一枚岩と巨岩の重なりの山頂であった。
雲が湧き上がってきていて、遠くの山々を展望することはできないのだが、近くの岩峰群を眺めることはできる。すぐ下にはすさまじい岩塔がそそり立っている。これが有名な「大ヤスリ岩」であった。そして、山頂の左には岩峰群の連なりが見える。すばらしい眺めである。山頂には私一人、この絶景を独り占めなのだ。
景色を眺めながら休憩していたら、雲が湧き上がってまっ白になってしまった。もう何もみえない。私は滑り込みセーフで登頂できたのだ。
下山しようと準備していたら、老夫婦が登ってきた。もう10分早かったら景色が見れたのに…。
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