茨木山からの下りはたいしたことなくて、すぐに平坦な道になった。落葉松林やクヌギの林の中を歩いて行く。こんなに平坦な道が続いていいのかと思ってしまうくらい緩やかな道が続くのだ。
広い尾根をジグザグに登ったら、展望が開けて下に池が見えた。遠くは白く霞んでしまっていた。
この少し先でピークを越える。緩やかなほとんど平坦なピークで、その先の下りも緩やかなもので、すぐに平坦な道になった。10分ほどで二つ目のピークを越えたが、ここは稜線より少し左下を通過するのだ。振り返るとさっき越えたピークが見えた。
笹藪を広く切り開いた道がジグザグに続いている。平坦な明るい尾根になったと思ったら、鬱蒼とした林の中に入って、すごく狭い尾根になった。すぐに尾根から右に下って岩だらけの荒れた道をトラバースするように歩いて行く。すると突然黒い岩壁が連なる下に着いた。この屏風のような巨岩に沿って歩いて行く。道が登りになって尾根の上に出ると、そこには「天然記念物鬼岩」と書いた白い標柱がたっていた。
この先は広い明るい尾根で、緩やかに登って行く。振り返ると、尾根は岩稜になっていて、これが鬼岩なのだった。
展望の開けた広い尾根を歩いて行く。四阿山の稜線が近づいてくるのだが、雲がわき上がってきていて、今にも山頂は隠れてしまいそうである。山頂での展望は期待できないみたいだ。
突然、鬱蒼とした林の中に入ってしまって、そこからはすさまじい急登になった。ロープが下がる険しい登りであった。樹林から抜出して少し行くと、露岩の展望台のようなところに着いた。ここからは行く手に四阿山の稜線を眺めることができる。私が歩いている尾根は岩壁をもって鋭く聳える山につながっている。まさか、あんな岩山を越えるんではないだろうと心配になってしまう。(実はそうなのだ)ここからは登ってきた長い尾根も一望できて、平野には二つの池が見えた。
岩だらけの尾根を過ぎて、さらに笹藪を広く切り開いた道を行くと、登山道はまっすぐに、あの鋭く切り立った岩峰に向かって行く。
樹林に入ると、いきなり急登になった。ほとんど垂直ではないかと思ってしまう険しい登りで、ロープや木の根にすがって必死で登って行く。
下から見えていた岩壁のすぐ傍を通過すると、岩場の登りを終えて緩やかになった。…これでもう安心と思ったら、ふたたび尾根に巨岩が立ちふさがった。この巨岩の左を捲くのだが、そこからは岩場の登りであった。これを必死で越えると、ようやく平坦な道になった。樹林から抜出して笹原が広がると、そこに指導標がたっていた。ここが茨木山分岐点である。9時25分になっていた。
この分岐からは木の階段が続いている。今まで歩いてきた道とは大違いのよく整備された道である。
この木の階段に腰掛けて休憩した。ここから山頂までは20分なのだ。あわてることはない。
木の階段を上ってゆくと木道になって、その先は笹を切り開いた広い道。行く手の山頂は雲に隠れていたのだが、それが薄れていって、鋭く切り立った山頂が見えた。山頂直下には岩壁が見えた。四阿山って、こんな険しい山だったっけと思ってしまう。
すぐに露岩の登りになって、鎖が下がっていた。これにすがって岩場を越えて、平坦な痩せ尾根を行くと三角点があった。道ばたにぽつんと三角点だけがあるのだ。二等三角点であった。
痩せた尾根を行くと、再び雲の中に鋭い槍の穂先のような山が浮かび上がる。これが本当の四阿山山頂である。緩やかに下って、それから鎖にすがって険しい岩場を登る。大きな岩だらけの尾根を少し行くと、コンクリートの御堂が見えてきた、ここが四阿山の山頂であった。登山者がたくさん休憩していた。私は御堂の後ろに登り着いたので、正面に回ってみると、そこに山名標識がたっていた。
山頂は雲の中で何も見えなかったのだが、休憩していたら雲が晴れて、三角点のあったピークがはっきり見えるようになった。そして、西側の山並みも見えた。展望が開けると本当にうれしくなってしまうのだ。
|