展望の稜線を歩いて行く。振り返ると黒斑山が鋭く聳えている。すごく立派な山だったのだ。時々樹林のなかに入ったりするが、すばらしい展望の稜線歩きが続く。下の草原には日の光を反射させる池も見える。行く手にはいかにも火山の白い岩山も連なっている。
道ばたにはたくさんの花も咲いていて、何度も立ち止まって写真を撮ってしまう。
黒斑山から30分ほどで、大きな岩の重なる道を登るようになった。平坦になったら大きな岩が聳えたっていて、その下に蛇骨岳という標識があった。
山頂からは北側の展望も開けた。広い平野の向うに高く聳えるのは、昨日登った四阿山であった。
蛇骨岳からは痩せた尾根を行く。けっこうきつい岩場を下ったりするのだ。10分ほどで白く風化した木の棒がたつピークを越えた。これが仙人岳ではないかと思って山名の標識を探したがなかった。(結局、無名のピークにすぎなかったのだ。)
ここからは滑りやすい砂礫の広い斜面下る。行く手の尾根は三角の岩峰が二つ突き出ているのが見える。岩礫の痩せた尾根を急登すると、白い棒が立つピークに着いた。
ケルンが積んであって、驚いたことにここには三角点があった。三等三角点なのだが、山名の標識はなかった。ここが仙人岳だと思う。ここからは黒斑山の眺めがすばらしい。そして、今たどって来た稜線の眺め、浅間山って本当にすばらしい山だと思ってしまうのだ。
まず岩礫の広い急斜面をジグザグに下るのだが、鞍部から先はナイフリッジのような尾根が待っていた。右側は断崖で、左は草の急斜面である。
この痩せた尾根はほとんど岩場の連続で、20分ほど行くと行く手には大きな岩が重なるピークが迫ってきた。このピークが鋸岳なのだ。この手前で鞍部に下ると「Jバンド」という標識があった。ここで稜線を離れて右に下るるのだが、この道をJバンドというのだ。岩だらけの鋸岳は越えなくていいのかとほっとしたのだが、このJバンドはすさまじい下りであった。(あとで浅間山から振り返ってみたら、外輪山の絶壁に地層のような岩の帯が斜めに走っているのだが、この岩帯に沿って下るのだ。岩帯のことをバンドというのだ。)
狭い岩棚のトラバース道を恐る恐る下って行く。右は断崖ですごく怖い。岩棚を7分ほど下ると、右に下る踏み跡がある。ここから外輪山の壁をジグザグに下って行くのだ。
岩礫の道を急降下する。下るに従って草原の斜面を行くようになって、それはきれいなお花畑であった。振り返ると岩壁が屏風のように聳えていて、草地はきれいなお花畑、下には広大な浅間山の火口原で、そこに登山道がまっすぐに続いているのが見える。すばらしい眺めである。
ようやく道は平坦になって、火口原の中を歩いて行く。トーミの頭から黒斑山へと続く外輪山の眺め、そして振り返ると大岩壁の連なり、浅間山ってこんなすばらしい山だったのだ。黒斑山まででは浅間山のすばらしさは半分も知ることはできない。そして、何よりも晴れていなければ…と思ってしまうのだ。
火口原を10分ほど行くと、背の低い針葉樹の中に入って、5分ほどで分岐に着いた。ここが賽の河原で、直進すると浅間山荘へ下るのだ。
|