日本アルプス全山縦走 
前岳 3068m
中岳 3083m
悪沢岳 3141m
小赤石岳 3070m
赤石岳 3120m
高山裏→前岳→中岳→悪沢岳(東岳)→荒川小屋→大聖寺平→小赤石岳→赤石岳→百間平→百間洞

今日は荒川三山を往復してさらに赤石岳も越えるという、南アルプス屈指のすばらしい縦走路を行くのだ。但し、荒川岳と赤石岳の間には標高差500mの鞍部があって、この登り下りはすさまじくきついのだ。
前岳から赤石岳


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2007年812日(日)

今日の予定はどうしようかと悩んだ。
今日登る荒川岳というのは前岳・中岳・悪沢岳(東岳)・千枚岳の総称なのだが、縦走路は前岳と中岳の鞍部から大聖寺平に向かって下ってしまうのだ。南アルプス完全縦走のためには千枚岳までを往復するべきなのだが、分岐からの往復だけで5時間40分かかってしまうので今日の泊まりは荒川小屋ということになってしまう。そうすると明日は5時間だけの歩行で百間洞
に泊まることになり、すごく無駄なような気がする。
いろいろ考えたが、千枚岳をあきらめて荒川岳の最高峰の悪沢岳を往復だけにするなら今日のうちに赤石岳を越えて百間洞まで行けそうである。でも、標準タイムで11時間半の行程である。まあ、昨日は十分すぎるほど休養したのだから今日は無理をすることにしよう。
当然、今日は早発ちである。3時に起きたので、テントの中でのパッキングは4時に終えてしまった。でもテントをたたむために明るくなるのを待っていたら、結局出発は5時になってしまった。
昨日の野営で水がほとんどなくなってしまったのだが、荒川岳に向かう途中に水場があるはずなので、そこで水を補給しようと思う。昨日やった往復30分の水汲みはもう御免だと思ったのだ。
針葉樹の中を行く。まだ朝早くて薄暗い中を歩いて行くと、小屋から15分ほどで水場に着いた。涸れていたらどうしようと思っていたので、ほっとした。私は登山中に水をどんどん飲んでしまうので、水がないと困ってしまうのだ。
ここで歯磨き・洗面をしてさっぱりした。
登山道は稜線の左をトラバースするように続いていて、ほとんど水平な道が続く。
樹林の中の道を歩き続ける。
1時間半ほど歩いてようやく樹林から抜け出すと、左側の視界が開け、遠くの山々に朝日が当たりはじめていた。草原が広がっていて、行く手には急な山の斜面が迫っている。
6時半に登り口に着いた。指導標がたっていて、ここで右折して急斜面を登るのだ。指導標の前で休憩しながら西の方を見ると、朝日を浴びた中央アルプスが眺められた。さらに北西方向の遠くには北アルプスの槍・穂高も見ることができる。今日もすばらしい天気だ。
いよいよ荒川岳に向かって登り始める。
すさまじい急登が延々と続く。見上げると首が痛くなるほどの急斜面で、その中をジグザグに登って行くのだ。登山道は岩礫にに覆われていて、すごく歩きにくい。
でも、もともとすごい登りになると覚悟をしていたので、焦ることはやめて一歩一歩ゆっくりと登って行く。息をついて上を見上げると、稜線にようやく朝日が当たり始めていた。
1時間の急登に耐えて、ようやく稜線に登り着く。そこから傾斜は緩まるかと思ったら、さらに痩せた岩稜の急登が続くのだ。ここで休みたかったが、こんな険しい岩尾根では腰を落ち着ける場所がなくて、急登を続けるしかなかった。ようやく傾斜が緩やかになると、痩せ尾根が荒川岳に向かって続いているのが見渡せた。この稜線から北の展望がすばらしい。塩見岳が聳え、その左奥には仙丈ヶ岳、右奥には間ノ岳と農鳥岳が見える。空は真っ青に晴れてすばらしい眺めだ。何枚も写真を撮ってしまった。
このすばらしい展望の中を荒川岳に向かう。稜線の上に出ると、南側の展望が広がり、そこには大きく赤石岳がそびえていた。すごい。
稜線の途中にある岩峰のピークを左に捲いて、緩やかに登ると山頂標識のピークに着いた。ここが荒川前岳で、標高は3068mである。時間はまだ755分であった。
ここまでは4時間かかるつもりでいたのだが、3時間足らずで登ることができた。これなら、なんとか赤石岳を越えて百間洞まで行けそうである。
前岳山頂でゆっくりと休憩することにした。山頂からは東に富士山がきれいに聳えているのが見えた。富士山は本当どこから見ても美しくて、やっぱり日本を代表する山だと思ってしまうのだ。南に聳える赤石岳はじつに堂々とした山である。ここから見る赤石岳が一番絵になるなのではないかと思ってしまう。そして行く手には、意外と間近に荒川中岳が聳えていて、その奥には岩場をまとった悪沢岳(東岳)が聳えている。ワクワクしてしまう展望である。
荒川前岳にザックを置いて悪沢岳を往復することにした。雨具を入れていた袋にポリタンとヤッケを入れて出発した。
前岳から緩やかに下って行くと鞍部に荒川小屋への分岐があった。ザックはここに置くべきだった…。
岩礫の道を10分ほど登ると中岳山頂である。820分であった。山頂のすぐ下には中岳避難小屋があって、その向こうには悪沢岳が大きく聳えている。あそこまで行かなければいけないのだ。
山頂から小屋に向かって下り、小屋の前からはすさまじい急下降になる。ザラザラの道をジグザグに下って鞍部に着いたが、鞍部にはコブのような岩の丘があって、もう一度登ってこの丘を越す。ほっとする間もなく、その向こうは痩せた岩尾根が続いていた。きつい…。
岩場の尾根を過ぎるとようやく悪沢岳の登り口に着く。ここからはすさまじく急な登りが始まる。

岩礫の道をジグザグに登る。途中、たくさんの登山者とすれ違った。もう盆休みに入っていて、彼らは千枚岳から縦走してくるのだ。
ようやく傾斜が緩やかになったが、山頂はまだ見えない。緩やかな尾根から振り返ると、岩礫におおわれた荒川中岳が大きく聳えている。中岳もすばらしい山だと思ってしまう。
登山者がたくさん立つ山頂が見えてきて、ようやく悪沢岳に着く。到着は925分であった。山頂に立つ指導標には「荒川東岳」と書かれていた。
私は荒川三山というのは千枚岳・悪沢岳・中岳のことだと思っていたのだが、本当は前岳・中岳・東岳(悪沢岳)なのだ。そうすると、無理をして千枚岳に下らなくても、ここで三山の縦走を終了したことになる。よかった。
山頂からは360度の展望が広がっている。赤石岳の左に二つのピークをもつ山が見えた。これが笊ヶ岳なのだ。この山に登ったときは日帰りにしたため、下山途中で日が暮れてしまったことを思い出した。
東西南北、どちらを見ても
3000m級の山々が聳えている。すばらしいとしか言いようがない。
山頂からの展望を満喫して引き返す。悪沢岳からの下りは登りで感じた以上にけっこうきつい。ザクザクの道をジグザグに急降下するのだ。それでも下りなので、花を眺めてきれいだと思うゆとりがあった。鞍部には石仏があるのを見つけた。
鞍部から中岳に向かって登る。この頃になると日差しが強くなって、炎天下の登りになった。
汗だくで前岳に戻ったのは10時半である。往復3時間10分を見込んでいたのに2時間半で戻ってこれた。さすがに空身だと速い。これなら、ゆとりで赤石岳を越えて百間洞まで行けそうだ。
前岳でザックを回収して下りの分岐に戻る。今まで空身だったのだが、ザックを背負うとその重さが肩に食い込む。急に足取りが重くなってしまった。
下山路の分岐からは前岳の南壁を斜めに下って行くのだ。行く手には赤石岳が大きく聳えていて、これを眺めながら行く山旅は本当にすばらしい。
どんどん下って行く。南アルプスのすごさはアップダウンの標高差にある。荒川岳から500m差を下って荒川小屋へ、それから再び500m差を登って赤石岳山頂を目指すのだ。いやになってしまう標高差である。
ザラついた道を斜めに下って尾根を乗り越すと、その先には緑の斜面が広がっている。その草原は広大なお花畑であった。ミヤマキンバイの大群落で、黄色の花が一面に咲き乱れているのだ。息をのむほどの美しさだ。見上げる斜面にも花は一面に咲き誇り、その上の空は真っ青である。
登山道のすぐ傍に雷鳥の親子がいた。まったく人を恐れる気配がないので写真が撮れた。

お花畑の中をジグザグに下って行くと真下に小屋が見えてきたが、メチャクチャに遠い。縦走路途中なのに1時間も下らなければいけないのだ。ようやく尾根から外れて、左に下ると小屋の前に着いた。新しいきれいな小屋である。小屋の前のベンチに座って休憩した。ここでテントを張ってしまいたいという誘惑にかられた。
小屋から稜線に向かって登って行く。たいしてきつい登りではないのだが息が切れる。登山道は稜線の左下をトラバースして行くのだ。平坦な砂礫の道が赤石岳の鞍部まで続き、たどり着いた鞍部が大聖寺平であった。砂礫の平坦地である。指導標が立っていて、ここから伊那側への下山路が分かれる。
赤石岳が間近に聳えているのだが、その手前には高いピークがある。まずこのピークに向かって登って行く。今日はまったくの晴天で、天気がいいのはうれしいのだが、天日にガンガンに焙られているみたいだ。
ようやく丘の上にたつと、そこから少し行ったところがこの丘と赤石岳の鞍部で、その先はすさまじい登りになっていることがわかる。これからの急登に備えて休憩。振り返ると岩礫におおわれた荒川岳が大きく聳えている。その山襞には登山道が刻まれていて、自分が下ってきた道を目で辿ることができる。すごい道を下ってきたんだと思う。

いよいよ赤石岳に向かっての急登が始まる。ザラザラの道をジグザグに登って行く。重いザックが食い込んで、肩が痛くなってくる。南アルプスは山の規模が大きくて、縦走といいながら、ほとんど麓から登るような標高差があるのだ。息が乱れないように、ゆっくりと一歩一歩登って行くしかない。
登っても登っても山頂には着かない。延々と登りが続くのかと思ってしまうのだが、実際は30分ほどの登りで尾根の上に着いた。この尾根の先には小赤石岳のピークがあって、さらにその奥に赤石岳山頂が見える。まだ遠い…。
でも尾根に出ると傾斜は緩やかになって、ハイマツの痩せた尾根を小赤石岳に向かって登って行く。山頂直下の急な斜面を登って小赤石岳の山頂に着いたのは1345分であった。
山頂からはすぐ隣に赤石岳が聳えていて、多くの登山者が立っているのが見える。
小赤石岳からは一旦緩やかに下ってそれから登るのだが、ガイドブックにはここら
1時間と書いてある。いかにも遠い。
休憩して息を整えて、今日最後の登りに挑む。鞍部に向かって緩やかに下り少しだけ平坦な道を行くが、すぐに急登が始まる。ザラザラの道をジグザグに登って行く。ただ足元を見て、ゆっくりと登って行く。上を見上げる余裕もなかった。下ってくる人からもうすぐですよと声をかけられたが、そのわずかの区間もきつかった。
山頂に立ったのは1428分である。
赤石岳の山頂に立つと、初めて聖岳を見ることができた。聖岳の左奥にりっぱな山が見えるのだが、地図で確認すると上河内岳なのだ。
山頂の南側には火口のような岩礫の窪地があって、そこに新しい小屋がたっていた。赤石避難小屋である。

山頂で休憩していたら、大学生のパーティと思われる4人がやってきた。みていると、どうも本格的な山岳部員とは思えなくて素人の寄せ集めのような感じだ。遅れて2人がやってきたのだが、ひとりは足をくじいたらしくて、足を引きずり疲労コンバイしていた。他人事ながらこのパーティは大丈夫なのかと心配してしまった。
山頂から下るとすぐに避難小屋がある。1983年に赤石岳に登ったときは山頂で嵐になってしまって、この避難小屋に逃げ込んだのだが、そのときの避難小屋はほとんどあばら屋同然で、風雨が激しく吹き込んできたのを覚えている。でも、今は本当に立派な小屋になってしまっているのだ。小屋の手前で右折して、岩に埋まった窪地を右から回りこんで外輪の尾根の上に出る。この岩尾根を南に緩やかに下って行くと、とつぜん岩礫の急斜面になった。ガラガラの道をジグザグに下って行く。
傾斜が緩まったところに指導標がたっていて、百間洞まで2時間と書いてあった。今、1520分なので、到着は18時近くなりそうだ。ここで道は右折して、赤石岳の南面の急斜面をトラバースして行く。大きな岩が累々とする急斜面を真横に横切って行くのだ。この道からは聖岳が間近に見える。明日はこの山に登るのだ。
岩礫の中の水平道はやがて稜線に突き当たって、そこで左折して稜線を行く。ここまでは草一本ない岩礫の中を来たのだが、ハイマツの中を緩やかに下るようになった。
緩やかなピークを越すと道の両側にロープが張られた平坦地に着く。ここが百間平で、指導標には百間洞まで40分と書かれていた。
指導標からは右に向かい、溝の中のような下降路になる。これを下るとすさまじく急な広い斜面に出た。真下に小屋が見えた。あそこまで急降下しなけらばいけないのだ。ガラガラの斜面をジグザグに下って行く。この道は長かった。足が痛くなって、つらい下りだった。
尾根から左に急降下してようやくテント場に着く。テントはびっしりと張られていて、どこに張れるんだと思ってしまう。ともかくテント場使用の手続きに行った。
小屋へは沢の細い流れに沿って
5分ほど行かなければいけなかった。小屋でテント場の番号を指定されたが、遅く着いたため、かなり不便なところであった。その上、テント場のすぐ下を流れる沢の水は使ってはいけなくて、小屋の前にある蛇口の水を使うのだ。テントから5分かけて小屋まで水汲みに行かなければいけないのだ。
テントを張って落ち着いたころに、赤石岳山頂で会った大学のパーティがやってきた。指定されたテント場は6人のテントを張るにはかなり狭いところで、ちょっとかわいそうであった。


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高山裏からの道


登山道にある水場


荒川岳への登り口


稜線を行く


前岳山頂


前岳から中岳を見る


中岳山頂


中岳山頂から避難小屋。後ろは悪沢岳


悪沢岳への道


悪沢岳への登り口


悪沢岳山頂


荒川小屋に向かって下って行く


お花畑になる


雷鳥に会った


小屋が見えてきた、でもまだ遠い


大聖寺平への道


赤石岳への登り


小赤石岳山頂


小赤石岳を振り返る


赤石岳山頂


山頂から赤石岳避難小屋


火口の外縁を行く


岩礫帯をトラバースする


百間平


百間洞への急下降





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