山と渓谷社のアルペンガイドに「東京周辺ワンディハイク」という本がある。発行日は1983年3月とあって、私が東京に住んでいたときに買った本である。
東京にいたときは仕事が忙しくて、あまり山に登ることはできなかった。
それでも、こんな本を買って、山に行きたいなぁなどと思っていたのだ。
この本を開くと所々にメモ用紙が挟み込まれている。
メモにはバスとか電車の時間、歩行時間が書いてあって、登山の計画だけはたてていたのだ。
今、このメモを見ると、懐かしいやらイジマシイやらで、なんか不思議な感情が涌いてくる。
この東京に住んでいたときに、登ろうとして登れなかった山の一つが「三頭山」である。
この4月から大阪に転勤することになったので、この山を登っておくことにした。
2002年3月2日
小山から奥多摩までは実に遠い。
いつもの通り、小山発5時10分のJRに乗ったのだが、いろいろ持ち時間があって、奥多摩駅に着いたのは9時少し前であった。ここでもバス待ちが30分ほどあって、登山口の小河内神社に着いたのは10時近くになってしまった。
どんなに遅くても9時には歩き始めたかったのだが、今日の計画のコースを歩くのは不可能になってしまった。
今日はこの小河内神社からヌカザス尾根を登って三頭山に至り、それから長い長い笹尾根を浅間峠までとどって上川乗に下るつもりであった。このコースは標準時間で8時間45分かかる。10時の出発では7時近くになってしまう。
しょうがないので、笹尾根の適当なところで下ってしまうことにした。
ガイドブックにはまず奥多摩湖にかかるドラム缶の橋を渡ると書いてある。
バスに乗っている間、心配だったのはこのドラム缶橋があるのかどうかということだった。なにしろ持っているガイドブックは20年も前のものだ。この前、丹沢の蛭ヶ岳に登ったときは泊まろうと思っていた小屋がなくなっていたのだから。
バス停で降りて、川を見下ろすと浮橋がちゃんとあった。ほっとした。
今はドラム缶などではなくなっていて、手摺までついた立派な橋である。
でも、浮橋にはかわりがなくて、歩いて行くとけっこう揺れる。
対岸に渡って急な道を登ると舗装道路に出る。この道を右に行くと登山道入り口があるはずのだが、なかなかその登山口に着かない。
道を間違えたかな、と思う頃にようやく石の階段があって登山口に着いた。
すぐに急登が始まる。奥多摩湖はするどくきり立った山に囲まれていて、その壁のような山腹を登っていくのだ。急なはずである。
最初のピークのイヨ山には11時15分頃に着いた。
ここで少し休憩して、次のヌカザス山をめざす。小さなアップダウンのある稜線を行く。
困ったことに途中から雪が目立つようになってきた。
ヌカザス山山頂直下はすごい急な道になった。急なのはかまわないのだが、登山道は氷雪に覆われていた。ものすごく滑る。
少し恐怖を感じてしまった。
岩とか木につかまって登っていくが、途中手がかりがなくて膝がガクガくするようなところもあった。
やっとヌカザス山山頂に着いたときはほっとした。
今日は念のために軽アイゼンをもってきている。これを早く装着するべきだった。
少し下るとツネ泣き峠でここから入小沢ノ頭に登り返す。
雪が深くなった。ここで軽アイゼンをつけた。
急な登りでロープが張ってある。これは助かった。
三頭山のすぐ近くになると、山腹の左を巻くようにして道が続いている。ここは完全に雪の中の道である。
着いたところが御堂峠で、道が十字に交わっている。
まず三頭山の東峰に登ることにした。ここに三角点があるのだ。
階段の道を登っていくと、ベンチなんかがある肩に出て、そこから少し行くと三角点のある山頂である。
山頂からすぐ先に立派な展望台があったが、残念なことに雲で何も見えなかった。
御堂峠に引き返す。ここから階段を登って中央峰に登る。これが普通いわれる三頭山の山頂である。
山頂にはだれもいなかった。
案内板が立っていて、晴れていたらここから富士山が見えるのだそうだ。
富士山が見たかった。
山頂を後にしたのは2時少し前である。
ここから笹尾根を下るのだが、西原峠・笛吹峠・浅間峠とたどると4時間45分もかかってしまう。ともかく行けるところまで行ってみようと思う。
山頂から少し下ると避難小屋がある。ここでバスの時間を調べて、それで予定を決めることにした。
避難小屋は本当に新しいきれいな小屋で、ここに泊まってのんびり笹尾根を下るべきだったと思った。
小屋には予想通りバスの時間表が貼ってあって、これで見ると最終バスは数馬発5時6分である。残った時間は3時間。3時間でどこまで歩けるか調べてみると、西原峠までは1時間半かかる。峠から下りを余裕をもって1時間かかるとすると、このあたりで下に降りるのが無難なようだ。
笹尾根の下りは南に面しているためか、雪が少なくなった。
大沢山、槙寄山とピークを越える。槙寄山から少し下ったところが西原峠であった。
西原峠に着いたのは3時。次の笛吹峠までは1時間なので、笛吹峠まで行けそうである。さらに尾根道を急ぎ足で下って行く。下るにつれて雪はどんどん少なくなるだろうと思っていたらそうではなくて、凍った道にけっこう苦労させられた。
笛吹峠には4時頃に着いた。さてここから1時間で下らなければいけない。余裕をもって4時45分にはバス停に着きたい。
結局、走って下ることになった。笛吹の集落には4時半頃に着いたのだが、道はさらに下って行く。
このあたりの集落は険しく切り立った山腹あるため、国道のあるところまではさらに急な道を下っていかなければいけないのだ。
バス停に着いたのは4時35分であった。
10人くらいの登山者がバスを待っている。どうやらバスに間に合ったようだ。
この待っていた10人くらいのパーティはタクシーを呼んでいて、1人の空きがあったので、私も同乗させてもらうことにした。
タクシーの中で話しを聞くと、このメンバーは青森出身の人が多いのだそうだ。
私の故郷ではないか。奇遇である。
タクシーに乗ったおかげで、武蔵五日市駅に着いたのは5時10分頃。(タクシーは5人が乗って一人当たり1400円であった)
8時過ぎに小山に帰ってくることができた。
来月は大阪に行っている。奥多摩の山に再び登るのはいつになるだろう。ちょっとさびしい。
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奥多摩駅
浮橋を行く
登山道入り口
イヨ山山頂
ヌカザス山山頂
雪が深くなった
三頭山山頂
ムシカリ峠
三頭山避難小屋
大沢山山頂
槙寄山山頂
西原峠
笛吹峠
笛吹のバス停
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