みょうぎさん

標高 1104m

上信越自動車道を長野に向かって
走って行くと、鋸歯のような鋭い岩峰を連ねた
妙義山を見ることができる。
自分には登れない山と思っていたのだが
20世紀最後の山はこれを登ってやろうと決めた。

  相馬岳

妙義山は思い出の山である。

20代の頃にこの山に登りに来たことがある。なぜ、この妙義山を思い立ったのかよく覚えていない。

駅で夜を明かして、目の前に聳えるゴジラの背びれのような岩峰群に圧倒されたのを覚えている。妙義山神社までバスで行って、お土産屋さんで登山地図がないか探したが、イラストマップしかなかった。地図無しで登ろうなんて、ずいぶん無謀である。

神社から大文字までは行ったのだが、奥の院の途中で道を失って引き返した。

今、考えるとこの時は引き返して良かったと思う。このころはまだ東海自然歩道を歩きながら、やっと山が少しだけわかってきた頃で、まったくの初心者。妙義山の岩場、鎖場を通過できるはずがない。

ともかく、このときは神社に引き返して、そこから中間道を歩いた。

それでも、最後の大砲岩に登ったときは鎖場がけっこう怖かったし、次の石門の通過にもずいぶん苦労した。でも、この印象は強烈で、妙義山という山はずうっと忘れることのできない山であった。

妙義山は南アルプスの鋸岳と同じく、自分には登れない山ではないかと思っていた。
山渓のアルペンガイドを読んでもすごいことが書いてある。

「このコースは単独での入山や初心者だけの入山は慎むべきで、岩登りの経験者をリーダーとし、30m程度の確保用ロープを持参することが望ましい。」

「白雲山からキレットへ下る。鎖場があるが、上部数メートルをフリーで下降した所に鎖があるので、このわずかな部分はザイルで確保してもらうとよい。」

これは自分には無理だと思った。

しかし、これまでずいぶんいろんな山を登って、岩場なんかもけっこう経験してきたのだから、なんとかならないだろうか。ちょうど紅葉もきれいな時だし、行けるところまで行ってみようということで出かけた。

2000年114日(土)

朝、4時に起きて、ザックに荷物を詰めて4時半に出発。

藤岡から上信越自動車道に入って、松井田妙義ICで降りた。

ICからは少し走っただけで妙義山神社に着く。車をどこに停めようかと迷って走っていたら、りっぱな町営の駐車場があった。

730分頃に歩き始める。

ここから見ると、妙義山の切り立った岩峰はすごい迫力である。その絶壁の中ごろに白く大文字が見えた。あそこまで登るのさえ大変そうだ。

妙義山神社の参道を歩いて行く。けっこう登山者も多い。ほとんどが中間道を行くハイカーだと思うのだが。

なんか、感じとしては戸隠山と同じである。

参道の石段も急である。ハイカー達は速いペースで私を追い越して行く。

岩場に備えて体力を温存してるんだと自分に言い聞かせる。

妙義山神社はすごくりっぱな神社であった。神社の社殿は日光の陽明門のように極彩色に塗られていた。昔来ているのだが、まったく記憶にない。

ここから右が大文字に向かう登山道である。石段の急な道を行く。

登山者で両手に木の杖をもったおじいさんがいた。妙義山のような岩山でダブルストックは無理ではないかと思ったが、よくみると足が少し不自由なようだった。

それでも山に登るか。がんばれ、と心の中で声援。

大文字には820分ころ到着。

ここまで登ってくるハイカーはけっこう多くて、大文字の鎖場には何人かがすがり付いていた。めんどうなので大文字に登るのは省略。もっとすごい岩場が自分には待っている。

大文字から20分ほど行くと分岐点にでる。左に行くと中間道に降りる。右が奥の院への道で、岩に大きく上級者コースと書いてあった。

意を決して出発する。すぐに岩場の道になった。鎖場を越えて、15分ほど行くと、道が石段のようになって、行く手に岩が重なってできた洞窟が見えてきた。これ奥の院である。

中に鉄梯子がかかっているのが見えた。

この右手に鎖場があった。すさまじく急な鎖場である。のっけから緊張を強いられる。

これを越えて、岩場を30分歩いて展望が開けた岩の上に出る。ここが「見晴し」である。

ここからさらに鎖場は続く。息もつかせぬスリルの連続で、この白雲山へ至る道はけっこう怖かった。

ガイドブックに「3本の鎖を登ると長い鉄梯子があって白雲山に登りつく」と書いてあったが、梯子なんてどこにもなかった。そして白雲山という標識も見つからないまま「玉石」というところに着いた。あとで考えるとこのあたりが「白雲山」であったらしい。この玉石から下るのだが、1箇所だけ厳しいところがあった。4mほど下に岩の道があるのだが、そこに降りるのが絶壁になっていて、足がかりがちょっと見当たらない。これは困ったと思ったが、この妙義山の岩場は、岩がホールドしやすくできているのに気がついた。岩からちょうど握れるくらいの丸い石がいくつもいくつも飛び出ているのである。これを支えにして、ほとんどアクロバット的なことをして、何とか下に降りることができた。

冒頭、ガイドブックで紹介した「フリーで降りなければいけない個所」とはここのことのようだ。

でも下に鎖場はなかった。

どうも、このガイドも信用できないような。(ついこの前、大無間岳でアルペンガイドの行程を信じてひどい目にあったばっかりだ)

ここから少し登り返したところには石碑が立っていて、これが「大のぞき」である。

ここで少し休憩。霧で何も見えなかったが、次第に晴れてきて、目の前に巨大な岩の絶壁が聳えているの見えた。これが天狗岩である。紅葉もきれいである。

ガイドには書いていなかったが、この妙義山の一番の難所はここからの下りであった。

3連の鎖場で、長さ30mある。

ほとんど垂直と思われる絶壁で、その足がかりがひどく滑りやすくなっている。これは怖かった。こんな岩場は自分もいくつか経験してきているので、最初は順調に降りていったのだが、3本目の鎖の真中あたりで力が尽きそうになった。

足場が滑るため、体重を足にかけることが難しくて、つい腕力に頼って下降して行ったのだが、さすがに30mの長さを降りると握力が続かなくなってしまった。

1連目、2連目と鎖の繋ぎ目で休むべきだったと思ったが、もう遅い。3連めのまん中、下まで5mほどのところで止まって休もうとしたが、少し気を抜くとズルズルと手から鎖が滑ってしまいそう。最後の力を振り絞ってようやくの思いで下に降りついた。

鎖から手を離したら、手の感覚がほとんどなくなっていて、ものが掴めない。

ここでしばらく休憩した。

樹林の中を登って天狗岩の肩に出る。樹林の中であった。左に細い道があって、これが岩の上に通じているようだ。でも、これは割愛。

ここからの下りは少し、というか、うんと判りにくかった。何かしら逆戻りしているような錯覚に陥る。大きく下って、その底がタルワキ沢への分岐点。ここから登り返して稜線にでる。稜線からは、すさまじい大絶壁の天狗岩が聳えているのが見えた。稜線に沿って、林の中の道をしばらく行くと相馬岳の山頂に着いた。

やった、と思った。

山頂からの景色はすばらしかった。特に南側が開けていて、金洞山の岩峰群の景色がすごい。そして、今は紅葉が盛りで、その錦繍に飾られた峰峰は息を呑むほど美しかった。

山頂に着いたのは1110分頃。ここには30分ほどいた。

休んでいたら、金洞山のほうから縦走してきた3人のパーティがあって、なんと彼らはヘルメットにザイル持参だった。今日はすごく岩場が滑りやすくなっていて、大変だったということだった。

それと、先に山頂に着いていた人から、さっき大変なめにあった長い鎖場で、10mほど滑落したの目撃したという話を聞いた。ガイドブックには記載がなかったが、あの鎖場がこのコース一番の難所だと痛感した。

山頂からは来た道を引き返した。タルワキ沢分岐から、タルワキ沢を下る。

この道は、見た目がすごい。両側に100mは越す大絶壁が切り立っている。その間の細い亀裂のようなところを下っていくのである。しかし、危険なところはほとんどない。

1箇所だけ、断崖につきあたって悩んだが、右に巻き道があった。ここを下ったところがちょっとした鎖場になっていて、やばいかなと思ったのはここだけである。

もし、相馬岳のみ登頂するのだったら、このタルワキ沢を登ったら、ほとんど鎖場なしで登れる。こんなコースをガイドブックは紹介してほしいものである。

中間道には12時半に着いた。ここからそのまま妙義山神社に引き返そうかとも思ったが、せっかくなので、昔をしのびながら、中間道を石門まで歩くことにした。

ほとんど記憶が残っていなかった。

この道は「関東ふれあいの道自然歩道」のコースでもある。石門までは水平な道かと思っていたが、かなりの登りになっていた。

バスツアーの団体と3回ほどすれ違った。けっこう人気のあるコースのようだ。

大砲岩のあたりに来ると突然人が多くなって、観光客のような連中が大勢たむろしていた。ここからみる相馬岳はすばらしくきれいだった。

大砲岩から少し下ると「第4石門」の広場に着く。ハイカーたちがたくさん休憩していた。

ここは撮影ポイントで石門のゲートの中に大砲岩を見ることができる。

車道の石門入り口に着いたのは1420分。

ここから車道を歩いて、妙義山神社に引き返す。途中1本杉から登山道に入って、ここを下って再び車道に出る。

妙義山神社の駐車場に着いたのは320分であった。

天気にも恵まれ、紅葉のすばらしさを満喫した「山」であった。そして、若かったときに、何も知らずに無謀にもこの山を登りにきたことを懐かしむことができた。

満足。



BACK 日本二百名山



妙義山神社の入り口


妙義山神社の神門


妙義山神社社殿


大文字から絶壁を見上げる


この絵図のほうがわかりやすい


ここからいよいよ上級コース


奥の院


岩稜の「見晴らし」


見晴らしから展望


玉石。これが白雲岳か


おおのぞき


タルワキ沢の分岐、まず山頂を目指す


天狗岩を見ながら相馬岳に登る


相馬岳山頂


ようやく中間道


本読みの僧、ここが中間道の中間点


岩壁の下を行く





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