標高1879m |
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八の沢カールの朝 |
1992年9月19日 この日高の山については、登りたいと思いながらも躊躇しつづけてきた。 まず、この山には登山道がない。沢を遡るしかないのだ。それも急峻な沢である。 かつてこの山では九州のワンゲル部員が3人、ヒグマに食い殺されるという悲惨な事故があったのだ。 それやこれやでグズグズしていたのだが、9月になって北海道ではもう雪の便りが聞かれるようになってきた。今年中に登れないかも知れないと思ったら、やもたてもたまらず、勇気を奮って出かけることにした。 日高の山は、西側の静内方面から入ることが多いのだが、今回は帯広側から入山する。 釧路から太平洋岸を走って浦幌に至り、ここから国道を離れて、中札内に向かう。 中札内から日高山脈に向かって伸びる林道に入る。川沿いの道で、流れているのは札内川だ。 この川の上流ではいくつもの沢が流れ込んできていて、その中の八の沢がカムイエクに至る登山道になる。 林道は七の沢出会いで行き止まり。 ここに車を置いて歩き始めた。 今回は、山の上で野営をしなければいけない。当然、荷物は重くなる。重荷で急峻な沢登りはきついので、テントは一番軽いシェルター型にした。 登山口からはすぐに河原にに出て、その河原を歩いていく。途中、適当に渡渉をしなければいけない。 沢登りというのは、歩くコースは自分の判断で決めていくのだ。 この札内川の本流を遡って、1時間半ほどで八の沢出会いに着くのだが、途中にいくつか沢が流れ込んできていて、どれが八の沢か判断ができない。 登山道といっても踏み跡程度のものなのだから、当然、指導標なんか立っていない。赤いテープがあったらそれが目印である。 最初、中の沢に入り込んでしまった。すぐにおかしいのに気がついて引き返した。 なんとか八の沢に入れて、渡渉を繰り返しながら登っていく。ここまではそんなに大変なところはなかった。 しかし、三股からはとんでもない様相になってきた。大きな滝が落ち込んできていて、この巻き道を攀じ登る。 このあたりからは滝の連続で、すべて巻き道があるのだが、私にとってはすさまじく緊張を強いられる登りだった。 やっとの思いで八の沢カールにたどり着いた。15時であった。 カールは紅葉真っ盛りで、すばらしくきれいであった。 ここにテントを張るのは自分一人かと思っていたら、テントが1つ張られていた。 ほっとした。 熊がでるというこのカールで、たった一人で野営するのはものすごく心細かったのだ。 9月20日 山頂には雲がかかていた。展望は得られそうもない。 稜線に出ると、そこは冬の世界だった。 山肌は白い雪に覆われて、本当に冬山だった。 この山行では3つの季節を一度に味わうことになった。まず、夏山の沢登りでカールまでやって来て、そこですばらしい秋の紅葉を楽しんで、そして最後は雪山になってしまったのだ。得したというべきだろうか。 雪を踏みながら、カールの縁の稜線を行く。 カムイエクの山頂に立ったのは7時40分であった。 山頂には小さな赤いトタン板にカムイエクを書いた標識があった。三角点の柱が立っていたがそこには札内岳とかいてあった。 もしかしたら、ここはカムイエクの山頂ではないのかとも思ったが、三角点があるのだから間違いないだろう。記念写真を撮った。 寒いし、霧の中でもあるのですぐに下山を始めた。 稜線を降りて行く途中、雲が切れて、カールに張ってきた自分のテントが小さく見えた。 登山口に帰り着いたのは3時15分。 そこで、カールで一緒にテントを張った人がいて、話をするとヒグマに会ったという。 八の沢を下ってくる途中で、沢の対岸を熊が歩いていたのだそうだ。 私は気がつかなかったのだが、もしかしたら熊と出くわす可能性があったわけだ。 ぞうっとした。 |
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