6月28日
4時半に目を覚ました。しかし、眠い。まだ3時間した寝ていないのだから。
テントから這い出したのは6時であった。
快晴である。
目の前に岩手山が、本当に富士山のような姿で聳えていた。すごい。来てよかった、と思った。
ともかく食事の準備。
…といっても、お湯を沸かしてチキンラーメン」を作るだけである。
沸騰したコッフェルのお湯にチキンラーメンをほうり込んで、ふたをして3分間待つ。これを食べた後は、もう一度お湯を沸かしてコーヒーを飲む。
これで朝食はおしまい。
荷物を全部収納して、出発したのは7時であった。
登山口の手前に「焼走り展望所」がある。
焼走りというのは岩手山が噴火したときの溶岩流のあとなのだ。
階段を昇って上に出ると、溶岩が累々とするその向こうに岩手山を眺めることができた。
岩手山の山開きは7月1日なのだそうだ。
岩手山は一時、噴火活動が活発化して、登山禁止になっていたのだが。私はこれはずいぶん前のことで、今はもう関係ないだろうと思っていたのだが、そうではなかった。
登山口には、山に入るにあたっての注意が大きく掲示されていた。
帰ってきてからわかったのだが、去年まではこの焼走りコース以外の登山道は閉鎖されていて、今年の山開きから初めて全コースが解禁になったのだ。
樹林の中の道をゆっくりと登って行く。
今回失敗したのはステッキを持ってこなかったことである。20kmの荷物を背負って歩いて行くと、やっぱりステッキが欲しくなる。
樹林の中の道はけっこう長い。この登山道のすぐ左は「溶岩流の跡」になっている。要するに焼走りに沿って登っているのだ。
噴火口に着いたのはまで1時間20分となっているのだが、2時かもかかってしまった。
ここでは樹林を抜けて展望が開ける。
岩手山を見上げると赤茶けた火山土に覆われて、富士山の山肌とそっくりである。
道は斜面を右にトラバースして続いている。
お花畑になっていて、道にはロープが張られていてこの高山植物を保護している。
コマクサの大群落が続く。
コマクサというのは本当に好きである。
高山植物の女王といわれる。本当だ…と思う。
私がコマクサを知ったのは、松本に転勤した最初の夏に日本アルプスに出かけるために買った「夏山Joy」という雑誌でである。
山と渓谷社が毎年夏山シーズンにあわせて発行する夏山特集である。その本の表紙にこのコマクサの写真が載っていた。中の記事でも白馬山でこのコマクサが見れると書いてあった。今から30年も前のことなのだが、そのときでも、白馬ではコマクサはほとんど見ることができなくなっていた。その後、私はたくさんの山に登って、いろんな高山植物の美しい花を見てきたのだが、それでも、今も、高山植物の一番はコマクサなのだ。
今の時期、梅雨の最中なのだが、私はこの6月・7月に山に登ったことはほとんどなかった。それは仕事の関係もあって、私が勤めていた会社では7月が営業のキャンペーン月で、その準備のために6月も大忙しで、この6・7月はほとんど休みがないのだ。
それと、今までは、梅雨の天気の悪いときに山に登ってもしょうがないではないかと思っていた。
ところが、この時期、山は花が一番きれいなときなのだ。私の夏山は連続休暇がとれる盆休みがほとんどなのだが、この時期では花を眺めるには遅いのだ。
いつもまにか空は雲におおわれて、下から霧が湧き上がってくる。
でも花を眺めながら行くと、すこぶる楽しい。
5合目に着く。黒い指導柱に「ツルハシ」とかかれていた。ここから下って行く道がある。私の持っているガイドブックの地図には書かれていないのだが。
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